繭の記憶

あるマゾにまつわる物語。

Column #4 魔物

わたしの中には魔物がいる。それはいつだって私を闇の世界に誘おうとする。私を破滅に向かわせ、人生を台無しにするほどの力もある。

私は魔物とずっと戦ってきた。幼少の頃からずっと。そして、自分の魔物に気づかなかった13歳までを除いて、私はずっとそいつをコントロールしてきた。そして、自分でコントロールするのに最も有効な手段がポジティブな思考でいることだということも知っている。私がネガティブでいると、魔物はあっという間に私の心を奪っていく。

この魔物の正体が被虐性であることは言うまでもない。だから私は自分自身を「マゾ」だと認識し、この世界の人にはそう公言してきた。どんな性癖を持っているか、と聞かれたなら、「マゾ。被虐性癖」と即答できるくらいにこの存在は大きい。そして、自分を失わないために「ポジティブマゾ」と自分を言い聞かせてきたし、近年は実際にその通りになっている。

でも、やはり、自分でコントロールするには限界がある。コントロールすることに精一杯で、それに多くの時間と労力を奪われていく。日常生活の他の役目が果たせなくなる。だからこそ、私は主という存在が必要だった。こういう書き方をすれば、即ち「主」はこの魔物をコントロールするためのツールに過ぎないのではないかという印象を持たれるかもしれないが、その通りだと思う。私にとってどうしても必要なツールだったということには違いない。

しかし、過去、何度もその当時の主よりも魔物の存在の方が大きくなって主従関係が破綻した。もっと痛めつけろ、もっと苦しませろ、と魔物が叫ぶ。それをどうやってコントロールするかで頭がいっぱいになることがほとんどだった。

今の関係がこれまでと全く異なる点がある。それは、《魔物=主が楽しむためのツール》という点である。過去の関係のように《主=私の魔物をコントロールするためのツール》ではない。主体はあくまで主にあり、主のツールとして私が存在しているのだ。

主は、魔物をまるで小型犬のように扱う。彼にとっては、おもちゃの一つに過ぎない。それが本当に有り難い。出会ってすぐの頃、「中途半端な人にお前をコントロールすることはできない」と言われた。たった数日で私の中にあるものの大きさを理解してくれたことが本当に嬉しかった。もちろん、主と出会ってからも、私が魔物の影響を受けることが全くないわけではない。殺されたいような願望な表に出てくることもある。でも、そんな時でも主の私への接し方は何も変わらず、そして、すぐにストレートな加虐で魔物を黙らせ檻の中に閉じ込めてくださる。

 

主はとてつもなく恐ろしい。自分の被虐性よりも遥かに恐ろしい。でも、このことこそ、私が主の足元にいる最大の理由だと最近は痛感する。

 

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