繭の記憶

あるマゾにまつわる物語。

思考が先行しない存在

人生は、常に課題の連続だ。幼い頃の親の要求、暴露した性癖への対応、社会的責任が生まれた時、そして気づけば複数の人間が私の存在で生きているという現在。段々と課題と責任が大きくなり、その度に私は成長してきた。様々な課題を乗り越えることにより自分の運命を文字通り切り開いてきた。変えてきた。

でも、対応できてしまうからこその苦悩もある。人に伝わらない感覚を持って、自分だけの処理方法で様々を変えてしまう。その感覚が自分の孤独に結びついているような気もする。誰にも、私の内面なんて分かりっこないのよ。分かって欲しいとも思ってないのかも知れない。大抵の人間は面白くなくて、少しの面白さを感じてもあっという間に底が見えて飽きてしまう。「そんなものか」って何度も思ってきた。

でもね、貴方だけは違うのよ。私に溺れない。私をコントロールしてしまう。SMでも主従でもないのに、わたしの心を変革し、行動を変え、トラウマを消し去ってしまった。もちろん「貴方だけは違う」という気持ちが一生続くのかは分からない。それも貴方は理解しているのだろうけど、それを理解しているというものも怖いのよ。「繭が離れれば、すっと日常に戻るよ」というその言葉に、貴方の強さと孤独が見えて、ああ私と同じように生きてきたのだなと思ったりする。

私は常に思考と感情が分離している。そしてほぼ全ての時間において思考が先行して物事の進め方を決めている。だから、まず見えるのは様々な場所で自分がどうあるべきか。そして、その中で自分の欲求や感情をどう解放させるか考えている。少し大袈裟に言えば、全てがフィクション、演技だったりする。

でもね、貴方の前だけは感情が先行する。思考がその後にやってくる。だから、ぶっきらぼうだったり、子どもみたいだったり、無表情だったりしてしまうの。でもそんな私で貴方が笑ってるから嬉しくなる。

貴方は、強さ、弱さ、孤独、ある種の切り捨ての中で生きているように私には見える。それこそ思考が常に先行している。でも、その中で、私といる時間だけは貴方の感情が先行して、ありのままの貴方でいてくれるなら、とても嬉しい。私がそうであるように。

孤独だから、全てを理解できないから、だからこそ一緒にいたいと思うのかもね。見えそうで見えない感情の揺れを、心の機微を感じ取るために。そして、自分自身の感情の揺れを味わうために。

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