繭の記憶

あるマゾにまつわる物語。

夢か現か

SMとはなにか、私が求めるものは何なのか、そんなことを問いただしてから10年以上の年月が経っている。頭で理論立てて自分の性癖を分析し、現実世界と折り合いをつけ、一定の範囲内でのSMをすることがほとんどになった。それは、私の被虐性を全てを吐き出せば、おそらく私がこの世から居なくなるから。そして、今、私だけの欲望で死を選ぶことを許される環境ではないから。それでも、その限界ギリギリを求めて彷徨ってしまう。何年経っても、私の根本は変わらない、変われない。

そして、本当に稀にその限界を与え得る方に巡り会ったりする。己の性癖を説明して、私はこれができないと言いながら、それが全て覆されるような遊びをした。指一本で、目だけで、少しの無駄もなく私のマゾを吐き出させる。もちろん、ドス黒い感情も、泥のような欲望も吐き出すことになる。マゾになり、女になり、そして、ただの叫び続ける生き物になる。周りが何も見えなくなり、加虐者の言葉しか聞こえなくなる。言葉の全てに瞬時に反応してしまい、それはほとんど無意識の領域だ。叫べ、腰を揺らせ、足を広げろ、股を見せろ、そんな言葉に何の違和感もなく素直に従っていく。加虐への悦びなのか、自分の欲への悲哀なのか、気づけば涙が流れ、そのうち慟哭にも近い叫びへと変化する。

陰部に鞭を打たれ、その痛みで腰を揺らす。腰を揺らせば、なんて下品な女だと罵られる。罰としての鞭が降りかかる。降りかかればまた、、。初めての場所、それも何人もの人がいる空間で、私は下半身をむき出しにし、鞭を打たれ逝き続けていた。たまらなかった。マゾとしての至高である。

自分のコントロールできない領域につれていかれる感覚、自分の感情、肉体、思考の全てが相手とリンクする感覚、それがすなわち究極の快楽へとつながる。全ての感覚がリンクして塊になる。その塊は私をあの世へ誘い始める。そうなればもう、あとはその塊に体を委ねるだけだ。意識があるのかないのかも分からない。今が夢か現かも。

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