繭の記憶

あるマゾにまつわる物語。

discipline #25 性癖

女王様がボロボロの私に手を振っている。思わず笑顔が溢れる。久しぶりにお会いできた嬉しさで胸がいっぱいになる。

女王様との出会いは、主との出会いよりももっと前。私が野良だったころ、自分の被虐性に絶望し、ほとんど駆け込み寺のように伺ったSMバーでだった。それからというもの、野良で苦しくなった時、主と出会った時、主とのプレイに溺れて日常とのバランスがおかしくなりそうになった時、どうしようも無く辛いことが起きた時、本当に色々な状況の時に最後の砦のように相談させていただいている、私のとっても大事な存在。主とはまた別の、私を見守っていただいている存在だと勝手に思っている。

女王様の足元に甘えにいくとそのまま首を太ももで挟まれて呼吸が苦しくなった。この無言のやり取りで「お元気でしたか?」「元気だった?」と挨拶をしたような感覚だった。

一縛目が終わり、幾らかの空気の緩みがあった。それぞれに感想を言い、自身の性癖やプレイについてたわいもない話をする。女王様が持参された鞭を取り出されて、主との鞭談義が始まる。

そのうちに、鞭を試すためにお尻を出すように指示される。ツールとして存在できる幸せで満たされる。主も女王様も鞭を持たれ、私を交互に打たれていく。スイッチなど何も入っていないままにわたしは強烈な痛みを味わう。ただ、私はこの状態で耐えられるほどは強くなかった。自分自身を正常に戻そうとする思考が邪魔をして早々に逃げ出してしまった。でも、逃げ出しても、戻ってこいと言われれば戻る。それは絶対。鞭のお試しだったはずの時間はいつの間にか完全なプレイの時間になっていた。そのままに、次の縛りに入っていく。私はここから数時間にわたって加虐を受け続けることになった。

主が指定した姿は全裸に褌だった。裸になり、ファインダーの前で主に褌をつけていただく、その時間は私の羞恥心を煽るに十分なものだった。そこままに縄が始まる。首にかかった縄は一縛目とは違うものだった。徹底的に縛り込まれる。

f:id:mayu_submissive:20211029083559j:image

f:id:mayu_submissive:20211029083602j:image

主の縄は縛っている時でさえ私の体を責め続ける。その時間全てで私の被虐性を満たしていく。丁寧に足に縄がかかっていき、吊られることがわかっていく。

f:id:mayu_submissive:20211029083802j:image
f:id:mayu_submissive:20211029083759j:image

戸口の前に移動されると、そのままに吊り上げられた。この縛り方は複数の留に負担が分散されるのでそれほど厳しいものではない。ただ、もちろんここからさらに加虐が追加されることは分かっている。その恐怖心が肉体的な責めよりも強い時もある。

f:id:mayu_submissive:20211029084105j:image

吊られた状態で鞭を打たれ始めた。女王様が笑いながら打ち続ける。主も打っていたかもしれない。

さらに一度降ろされたあと、腰縄から取られた縄で体がつられていく。逆さ吊りとは比べ物にならないほどの強い責め。体の体勢も股縄の痛みも、まだはっきりと残っている鞭の痛みも、私を限界に押し込んでいく。意識が飛んでまた戻る。戻れば2人が笑っている気がした。楽しんでいただいてるんだと嬉しくなって、またそのまま苦痛に浸る。叫ぶ。叫ぶ力がなくなっていく。意識が飛ぶ。そんなことを繰り返す。いつの間にか降ろされていた私の首を主が強く踏む。呼吸ができなくなり、死がすぐ隣に来る。そうすると、生きたいという気持ちに気づく。何度味わったって、この自分の意識に気づく瞬間は私の日常の平穏につながっている。

f:id:mayu_submissive:20211029084130j:image

完全に体が地面につくと、女王様が上に乗ってくださった。まだ股縄と繋がっている吊り縄を持たれて、そのまま私をおもちゃに遊ばれる。とうに股の痛みは限界に達しているというのに、(それを女王様はすっかりご承知なのに)まだその縄で遊ばれている。その楽しそうなお顔に私が嬉しくなって笑顔になった瞬間に強く引かれて叫ぶ。ピンヒールで胸を踏まれて、鼻フックをされて、女性として本当に恥ずべき姿になっていく。穏やかに堕ちていくその時間が堪らなかった。

体を起こせば、針が待っていた。ずっとしたことがなかった針。したかった針。でも、やっぱり恐怖心が強くなっていく。そもそも、こんなに満身創痍の体で未知の痛みに耐えられる自信がなかった。

結局、(正直なところ)針自体の痛みは鞭に比べれば本当に些細なもので、その一瞬の鋭い痛みは私の楽しみを満たすものだった。ただ、その針をライターで炙られていくと強烈な痛みが足された。ライターで体を炙られているような感覚にさえなった。そして、肌に癒着した針を女王様は丁寧に抜いてくださり、私の血を丁寧に拭き取ってくださった。ついに、数時間にわたる徹底的な加虐は幕を閉じた。

 

このプレイの中で私は何度も絶望を味わった。許して、と何度も叫んだ。号泣もした。ただ、終わればその全てが幸せになる。痛みや苦しみ、それ自体がやはり私にとっては喜びなんだと改めて自覚した。

あの古民家の遊びから少し時間が経った今、あれは幻だったのかもしれないと感じる。性癖としてSMを愛するものだけが集まる空間。そこにそのほかの余分な要素は何もなかった。ただ痛めつけ、痛めつけられる、そして、その性癖を誰に引かれることもなく、暖かく受け止められていく。そのことが何よりも嬉しかった。

 

集まってくださった全ての人に感謝を込めて。

最高の時間をありがとうございました。