繭の記憶

あるマゾにまつわる物語。

discipline #13 責め縄

久しぶりのシティホテルでの調教の日はみぞれが降るような寒い日だった。次第にそれは雪に変わり、体の芯まで凍りつくような寒さとなっていく。でも、私の心は踊るように弾んでいて、主と会えることを心待ちにしている。ロビーのソファに座っていると、予想よりもずっと早く主が来られて、思わず顔が綻んだ。

 

荷物を置いて軽くご飯を食べる。お酒が体に染み入ると、私はますます主の縄が欲しくて堪らなくなった。普通にお話をしていても、殴られたいと思ってしまう、、本当にどうしようもなくマゾだ。

 

部屋に戻ってすぐに調教は始まった。

「縄を出せ」

そんな言葉で飛び上がるほど嬉しくなる。何度聞いても本当に嬉しいお言葉。

 

下着をつけたまま縄をかけられる。主と出会うまでの私では到底買わないような色の下着は、自分の羞恥心を引き出しつつも、その自分を楽しみはじめていることも分かっている。わたしには確実に変身願望が出てきていると。

縄は蛇のようにわたしにまとわりつき、ゆっくりと苦しみを増加させていく。いつでも私を限界まで持っていけるのに、そのタイミングを見計らい楽しんでいるかのような掛け方に恐れを抱き始める。ほんの少しの股縄の刺激だけで、快感と痛みが体全身に走る。

 

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さらに体勢を変えられ、羞恥が入ってくる。足を大きく開かれたその姿をカメラに収められていく時間、私はいつも自分の立場を、拒否権のない最下層だということを強く感じる。

 

限界を迎え、足にかかっていた縄を解かれても、その足を動かすことさえできなかった。体にまだ縄が残っているような感覚で、主が私の足を伸ばして下さった。そういう優しさが本当に嬉しい。

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しばらくの休憩の後にさらに縛っていただけることになった。

 

主の縄は形が完璧に決まっているのに、責め方は毎回違う。形で苦しめられるところは私の安定に繋がっているし、毎回違う責め方は恐怖と悦びを感じる要素。

 

二縛目もいつもの責めから始まり、そしてどんどんと辛い体勢に追い込まれていく。

胸、お腹、股縄、、、苦しさから逃げようとした足はそのままの形で縛られてしまい、その縄が上の縄と繋がると、私はどう逃げようとしても逃げられなくなる。まさに拷問の時間が始まった。

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全身から汗が吹き出し、悶え苦しみ、うめき声しか出ない。性的な快感ではなく、雑味のないストレートな苦しみが与えられ続ける。

少し縄を引かれるだけで呻き声は叫び声となった。

「うるさい。」と容赦なく叩かれ、私は声を出すことも制限される。もはやこの痛みをどこかに逃ささせることも、主張することもできない。私は苦痛に支配されてしまった。

 

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最後に髪の毛を縛られ、私の体は完全に動けなくなる。そして、呼吸を遮られる。意識が飛ぶ、、と感じた瞬間、私はどうも本当に気絶してしまったようだった。

 

主の縄は痛みを与えるために拘束をする前段階のものではない。鞭のように、それ自体が責めであり、調教。

 

正直なところ、私は縛り方についての知識がない。手首の縛り方もわからない。それでも、主の縄は別格だと感じている。野良だった私を救ってくれた縄だった。

 

だからこそ、今後も主の縄で救われる人がたくさんいるといいなと心の底から思っている。私のように苦痛や支配がないと生きていけない人種にとっては、主の縄はまさに救世主だと思うから。

 

意識が戻ると、主がすぐそばにいてくれた。縄を解かれはじめていて、私はその優しさと開放感に思わず笑顔になった。縄だけで責められる調教もたまらなく幸せ。

 

ホテルを出る頃には、夜空に星が輝いていた。