繭の記憶

あるマゾにまつわる物語。

discipline #37 苦しみと幸せと

discipline #36 旅路の続きです。

目覚めるとすでに明るくなっていた。主はまだ隣でお休みになっている。昨日の楽しかった様々を思い出し、思わず笑顔になった。まだ、静まり返っている旅館。その庭園を少し歩くことにした。

散歩のお供は、最近買ったカメラ。主が楽しそうにカメラのお話をされていて、私もしてみたいなと思い購入したもの。SMだけではない、私の中のいろいろな価値観が主に染まっている。そのことが嬉しい。マニュアルで撮ると楽しいと教えてくださったのは主。小さなお花を撮ってみる。何枚も取るうちに自分の好きな色になった。

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ああ、こういう楽しみがあるのか、と嬉しくなる。撮っているうちに雨が降り出して、慌てて部屋に戻った。そのまま露天風呂に入り汗も雨も流していく。もちろん、この後の縄を思って。

主が起きられた。朝ごはんの前に一縛するか、と。全裸で縛られ露天風呂に連れていかれた。初夏の香りがする外気、恥ずかしさと幸せでいっぱいになる。遊びのような時間でも、少しずつ私に苦しみを与えていたその縄は、あらかじめ柵に作られていた吊り縄に縛ると一瞬にしてその加虐を増した。上半身の自由が奪われる。そして「足を上げろ」という主の声。身体が宙に浮くと、もはやそれは遊びではない深く鋭い苦しみに変化していった。手ぬぐいで口を覆われると呼吸が浅くなる。脳に酸素が回らなくなり、考えることができなくなる。そして足が下りてしまう。下ろせば意識が戻り、また足を上げたいと思う。苦しみをもっと感じたくなる。そしてまた…こういった自分で自分を追い詰めるような縄も好きだ。

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朝ごはんを食べた後、さらにもう一縛。少ない本数で縛られた体が部屋の梁から吊るされている縄で引き上げられる。体の自由が利かず、ただ苦しみを与えられる時間。主が撮られている時間に高まる苦しみ。だんだんと出なくなる声。呼吸をできなくなってしまうのではという恐怖。呼吸をコントロールされることは生死を支配されること。もうこのブログでは何度も書いたが、何度だって、この感覚は味わいたいし、どれほど味わっても、またすぐにこの感覚を求めてしまう。そしてたどり着く桃源郷。幸せの極地だ。

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限界を超えると、足は下ろされたが、だからといって逃げることはできない。自分が楽な方向に逃げようとすると、縄はそれを分かっていたかのように苦しみを増やしていく。縄は、すなわち主。主と私が縄を通じて対峙しているように感じる。そんなやり取りが出来る人は、世界中探しても主しかいない。あの縄は文字通り唯一無二だ。

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チェックアウト直前まで縄を楽しんだ後、私たちはその宿を出た。主が「また来ますね」と仲居さんにお声をかけれていた、そのことがとても嬉しかった。