繭の記憶

あるマゾにまつわる物語。

苦痛と美の関係性

呼吸を止められる、痛みを与えられる、快楽に絶望する、そのすべての欲求は私の思考回路を止めるための道具なのではないかと最近は思う。 どうにも、この二重、三重に重なる思考回路と視点をあまり多くの人は持っていないらしいと気づいたのは大学生の頃だっ…

思考が先行しない存在

人生は、常に課題の連続だ。幼い頃の親の要求、暴露した性癖への対応、社会的責任が生まれた時、そして気づけば複数の人間が私の存在で生きているという現在。段々と課題と責任が大きくなり、その度に私は成長してきた。様々な課題を乗り越えることにより自…

涙の理由

この涙は何。何故泣いてる。痛みはもう無くなったのに。痛みがなくなったから泣いてるの?私の感情はどこにある?戻ってきて。こんなSMを知ったらもう、どこにも行けないじゃない。 ーーーー 先生と出会って数ヶ月。ますます溺れて、ますます求めるようにな…

人間であることの優位性

「緊縛」という言葉が(比較的)当たり前に使われ始めている昨今、その言葉の捉え方はあまりに多種多様になっている。そして、その言葉の認知が不一致することによる不運も多いと聞く。わたしが「緊縛」という言葉を知ったのは15年ほど前だった。 ある女性緊…

そのままの私。

強くない。 全然強くない。 強く見せないと、弱みに漬け込まれるから。 強く生きないと、命を削られるような思いをしてきたから。 でも、本当は弱い。 周りが思ってるより、ずっとずっと弱い。 その弱さを見せられるのは、貴方だけ。 貴方だけには私の弱さを…

異常性癖に生きる

貴方に会えば、絶望が待っていることはわかっている。それでも、会いたくなる。あの絶望に会いたくなる。 あの苦痛は、この世のどこにもない。それを求める自分が憎い。マゾという自分も嫌い。それでも、どうしてもやっぱりそこに戻らないと生きていけないの…

マゾという蟲と共に生きる

マゾが蠢き出せば、どうにも止まらなくなる。仕事をしていても、日常を送っても、その醜い欲は消えない。むしろ増大するだけだ。苦痛を求める声が仕事中に襲って、会議室に篭る。突然に涙が出てくるのは、子どもの頃から何一つ変わっていない。 どれだけ精神…

死を考え、生きるに至る。

いづれ、この世の全てに刺激がなくなることはあるのだろうか。痛みや苦痛を求め生き急ぐということは、命の終焉に急速に近づいているということではないか。 もっと、もっと壊されたい。破壊されたい。それでしかリアルを感じれなくなっている。大抵は想定の…

SMで遊ぶ、ということ

「SMで遊ぶ」と言う表現をし始めたのは、最近のように思う。これまでは、SMは主従関係の人とのみするものだと私は定義していた。でも最近は、SMで遊ぶ友人や、お店、場所がある。それを素直に楽しめていたりもする。 もちろん、遊べているのはパートナーであ…

恐怖に惚れる

彼が与える苦痛はいまだにそこが見えない。普段は穏やかで楽しいのに、突然の一言で堕とされる。男性器恐怖症のはずなのに、彼のそのものだけは無性に欲しくなり、居ても立っても居られないほどになる。私を逝かせ続け、壊し、そして現世に戻し、また壊す。…

美しく生きれなくても

私には今、いくつかの居場所がある。少なからず、遊んでくださる方もいる。そして、普遍的に穏やかに恐怖を感じれる特別な存在。 私はずっとずっと求めているものは主従だと思ってた。主従でしか満足できないと思ってた。ご主人様という絶対的な存在にひれ伏…

夢か現か

SMとはなにか、私が求めるものは何なのか、そんなことを問いただしてから10年以上の年月が経っている。頭で理論立てて自分の性癖を分析し、現実世界と折り合いをつけ、一定の範囲内でのSMをすることがほとんどになった。それは、私の被虐性を全てを吐き出せ…

またこの感情か。

自分の被虐性が憎い。自分の被支配欲が憎い。 何度だってこの状態になった。初めての主と別れた時、その次、その次、、、そして今回も...そうやって、この辛さを知るたびにSMから離れたくなって、それでも離れなくてその事実に絶望する。私にもし被虐性がな…

intercourse #1 恋愛

「逝け。」 声なんてとうに出ない。呼吸さえろくにさせてもらえない。ただただ快楽に溺れ、言葉に操られている。何時間経っただろう。どうやら夜が近づいているらしい。今日もまた何百回と逝かされ、私はそのまま意識を失ってしまうのだろう。 出会いは数ヶ…

discipline #42 躾けられているという状態

主との関係が2年を超えた。体も心も随分と躾けられ、変化してきたように感じている。例えば、私の体には縄や鞭でついた無数の痕がある。おそらく一生消えないであろうものも幾つかある。でも、その痕は私にとっては目に見える形での「主からの愛」であり、こ…

discipline #41 欲を見たい

加虐癖や被虐癖を持っている人の多くは、日常ではそれを隠し、一般の人と溶け込みながら生きている。その癖が強ければ強いほど、一般の人としての自分を演じ、社会に溶け込まないと生活のあらゆる面で支障をきたすと思う。 例えば、自分の被虐癖に気付けてい…

discipline #40 美しいものを求めるとき

縄を受けた夜、帰り道は決まって同じ曲を聴いている。上原ひろみのHaze。雑音や騒音を聞きたくないから。拷問縄を受けてすべての欲や苦しみが浄化された体には、美しいものしか入れたくなくなる。縄の後にすっかり寝てしまって、少しばかり体力の回復があれ…

column #8 成長欲

人間力を鍛えたい。 主の出会いや、主と出会ったことで生まれた新しいご縁、SNSから派生した繋がり、その中で私が魅力的だなと思う方は圧倒的に人間力が高い。 思考の中に確たる芯を持っていて、かつ、他者にそれをぶつけない。自分の承認欲求はその芯の部分…

discipline #39 コミュニケーションの方法

思い返せば、主と出会ってからの日々で苦しかったことなど一日もない。苦痛を与えられているのにも関わらず、毎日が本当に幸せで楽しく穏やか、ほとんど奇跡ともいうような日常を送っている。 主は私の精神状態を察知することが極めて得意だ。得意というレベ…

discipline #38 絶望こそ、加虐こそ

この感覚はいつぶりだ。初めて拷問縄でギブと言った日、鞭で痛みがなくなった日、股縄だけで吊られた日、私が一生忘れないであろう調教はいくつかあるけれど、その調教に匹敵する縄を受けていた。2時間前まで。まだ意識が現世に戻っていない。この文章は、…

discipline #37 苦しみと幸せと

discipline #36 旅路の続きです。 目覚めるとすでに明るくなっていた。主はまだ隣でお休みになっている。昨日の楽しかった様々を思い出し、思わず笑顔になった。まだ、静まり返っている旅館。その庭園を少し歩くことにした。 散歩のお供は、最近買ったカメラ…

discipline #36 旅路

主といる時間はなぜこんなにも幸せなのだろう。日常に溶けていくSMも、非日常な調教も、そして旅路でも、主の隣にいる私はいつも笑っている。 最近、主にお誘いをいただき温泉に行った。旅行の際は、その宿も移動手段もご飯も私が手配する。その、サブミッシ…

column #7 SMは暴力か

主がただただ、殴り、蹴り、抓り、私をサンドバッグのように扱う時がある。 完全な暴力だ。理由なんてなんとでもなる。気分が悪い、イライラすることがあった、私がミスをした、言葉が悪い。「お仕置きをする理由なんていくらでも作れる」と言ったのはいつか…

discipline #35 お守り

久々に自分の被虐性に苦しむ夜を過ごした。仕事やプライベートのイベントが重なり、縄の予定が複数回に亘って延期をしたから。 ある日の夕方に一人の時間ができ、被虐性が私を蝕み始めた。その強さは夜にピークを迎え、ありとあらゆる感覚が痛みを欲するよう…

column #6 サブな私の頭の中

サブである私が自分に課している唯一にして最大のミッションは「いかに主に楽しい時間を提供するか」です。これが達成できるのであればほとんど手段は問わない。ほとんど、と書いたのは、私や主の生命や生活などに大きく影響が及ぶことはできないからです。…

discipline #34 呼吸

呼吸が止まる瞬間、すなわち死がすぐ側まで来ている時間がたまらなく好きだ。呼吸を止められるだけで、思考、動き、発声全てを止められてしまう。叫ぶことも許されない。どんな拘束よりも自由を奪われるその瞬間がたまなく好き。 主の縄は初めから呼吸制御が…

discipline #33サディスト

主との地理的距離の近さもあり、最近は日常と非日常の差があまりないように感じる。プレイ(といっても、セックスは全くしないが)の日だけでなく、主のお仕事場へのお見送り、休日の買い物、仕事終わりの呑みなど、そういったものも含めるとほとんど毎日と…

column #5 パートナー?SM婚?

(ただの駄文で、個人的見解です。) なぜ、SMを求めるのか? なぜ、苦痛を求めるのか? なぜ、パートナーが必要なのか? 自分の中で整理することが重要では。分からないままに闇雲に遊んだり、パートナーを探しても心の穴は埋まらない。むしろ、嫌な思いを…

discipline #32 極上の苦痛を極上の空間で

私たちの部屋を作り始めて1ヶ月。想像を遥かに超えて、素敵な空間が出来上がっている。一つ一つを丁寧に作業していく幸せ。一緒に作業できる幸せ、そして、子どもの頃には「危ないから」とあらゆるものを制限されてた私にとって、電動ドリルや鋸を使うことも…

discipline #31 自然体

私たちが自然体でいられる時間はそれほど多くは無い。 社会的役割や家族での役割に応じて私たちはいくつもの面を使い分けている。完全に自分を解放できる時間は一人になった時くらいしか無いのでは無いかと思う。 主に出逢う前の私は、性癖を解放する時間で…