繭の記憶

あるマゾにまつわる物語。

discipline #36 旅路

主といる時間はなぜこんなにも幸せなのだろう。日常に溶けていくSMも、非日常な調教も、そして旅路でも、主の隣にいる私はいつも笑っている。

最近、主にお誘いをいただき温泉に行った。旅行の際は、その宿も移動手段もご飯も私が手配する。その、サブミッシブとしての役割を果たせることもまた喜びの一つである。そして、私が提案したお宿に行くと、いつも「素敵だね」と言ってくださる主が好き。

今回の宿は露天風呂付きの客室。さらに、貸切露天まであり、主はどのシチュエーションで縄をしようかと旅の前から考えていらっしゃった。そして、チェックインをして早々に貸切露天に入ることになった。

梁はしっかりとしたものか、周りから見られることがないかなど、状況をしっかりと確認してくださるその気遣いがいつも嬉しく、だからこそ私はどんな場面でも安心して苦痛の果てに行くことができる。

後手をされれば、先ほどまでの空気は一瞬にして変わる。私はただのマゾになる。上半身を縛られたら、そのまま吊り上げられ、私が自ら足を曲げることにより完全に体が吊られる。自分で負荷をかけて苦しみを与えていく。蚊が私の足に止まっても、私は何もできない。私は完全に自由を奪われていることに興奮した。

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この宿は複数の貸切露天風呂があり、空いていればいつでも入れる。私たちは一つ目を出てすぐにまた次の貸切露天風呂に入った。

一つ目はそれほどきつくない縄だった。温泉宿での縄、特に露天風呂ではそういうことがこれまでもほとんどだった。2人で素敵な場所での撮影を楽しんでいる感覚。でも、二つ目の貸切露天風呂で主は突然私を落としにかかった。あっという間に全身の動きを封じ込められる。首にかかる縄が確実に私の呼吸を止めていく。さらに手拭いでその範囲は狭められた。逃げようとすると余計に食い込む縄が、「お前はもうここにいるしかない」と私に伝えてくる。焦る私を逃さず、落とし、そして、居場所を認識させる。苦痛から居場所を感じられる段階になれば、それはすなわちほとんど苦痛を感じていない。責め縄が突如、暖かく柔らかな毛布に変わっていく。私は主と出会ってからずっと、その感覚の虜だ。

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縄が終わり、主との夕食を楽しんだ。そして、1日目の夜はあっという間に更けていった。