繭の記憶

あるマゾにまつわる物語。

discipline #12 鞭

主に初めて出会った日、私は鞭の痛みで恐怖心を抱いた。その後の一週間はとにかくひたすらに叩かれ続けた。お尻が常に真っ青で、それでも叩き込まれ、主の痛みを覚えさせられた。この人には絶対に逆らってはダメなんだと強く認識した。

 

でも、その後、鞭で追い詰められることは段々と少なくなった。違う痛みを与えられていたから。(私が好きではない痛みを覚えさせられていた期間だったのだと思う。)

 

そして、出会ってから3ヶ月がたったサロンの日、散々縄で苦痛を与えていただいたにも関わらず、まだ被虐性が残っていた私は、畏れ多くも主に痛みが欲しいとお願いしてしまった。

 

主が鞭を持つ。やはり、それだけで体に痛みの感覚が蘇ってくる。そして嬉しくなる。

 

「四つん這い。尻を上げて」

鞭を打つときの体勢になり、打たれ始める。初めは心地よい痛さだったが、すぐに限界が来た。容赦なく打たれる日だ、と感じた時にはもう手遅れだった。やめてと懇願しても、どれほど暴れても、打たれ続けた。

 

「これからが楽しいんだよ。」

主の冷徹な言葉が飛ぶ。私は四つん這いの体勢になることさえ困難なほどに、全身が痛みで包まれていく。お尻だけではない。背中にも脚にも、そして足の裏にも容赦なく鞭を打たれていく。

そのうち、体勢が取れなくなり、本気で逃げ始めたら、主は私を強く踏みつけて打ち始めた。私が逃れようとしても、もし少しだけ逃れることが出来ても、それでも鞭が止まることはなかった。仰向けになって踏まれたときに主の顔が見えた。さっきまでの優しい目ではない、完全な支配者の目だった。私を冷酷に見下し痛みを与えるその表情、、、その顔を見れた瞬間にとてつもなく興奮した。やはり私は主のものなのだと。

鞭の種類が変わり、鞭の柄(え)の部分で殴られ、そして、竹でぶん殴られる。私が限界を超えて体全体に酷く痛みを感じるようになった頃、ようやく解放された。

 

「こっちおいで」

という言葉。その言葉が何よりのご褒美。主の足元に縋り付いて、抱きついて、主の暖かさを知るとき、この人の従者でいれてよかったと思う。

 

普通ならただの虐待行為だと思われるだろう、それでも、私はこの痛みが好きだし、主のあの冷酷な表情を見れることが何よりも嬉しい。懇願しても許されない、絶対服従なのだと感じられる時間が私にとってはやっぱり必要で、そしてそう感じることで居場所がここにあると再認識できる。

 

限界まで追い詰められる鞭は、また、縄とは違う蜜の味だ。