繭の記憶

あるマゾにまつわる物語。

discipline #4

今日の躾はとても素敵なシティホテル。仕事が終わると私は職場から駆け出した。

 

向かう途中で携帯に「ご飯予約したよ」のメッセージが届く。こんなことでも私の体はまた反応してしまっている。ご飯の時にもきっと遊んでくださるのだろうと。。。

 

ホテルの部屋に入ると主のタバコの匂いが私を包む。この匂いにも随分と惹かれ始めている気がする。そういえば、煙草の匂いはあまり好きではなかったのに。。そして、「遊びたいでしょ」とリモコンローターを付けられる。(あ、私の思ってた通りの遊び方。)と心が弾んだ。さらに軽く股縄をかけていただき、ご飯やさんへと向かうことになった。

 

歩いて5分の距離、ローターが動いていなくとも、私は感じてしまう。だって主が楽しそうな顔をしているから。もちろん、ローターはすぐに動き出した。機械的に私の大事なところを刺激する。私の感覚がその無機質な道具にコントロールされていることに興奮した。たわいも無い会話をしながら、主が私で遊んでいる。主が楽しまれている、と感じられるとこちらも楽しくなってしまう。つくづく、サブミッシブだ。

 

部屋に戻ったらいよいよ調教が始まった。前回の続き。羞恥を徹底的にされるということは分かっていた。それが少し怖かった。

 

ーーーそう、、私は昔から優等生だった。優等生でなければ生きられない環境だった。だからいつだって真面目で、努力して、決して人の道を逸れないように、生きていた。性欲を丸出しにしたり、他者に対して性的なアピールをする下品な女になることは、私のルールからは逸脱するものだった。

SMの世界に身を置いているときでさえ、そのルールは有効だった。主への忠誠は絶対。努力もする。でも、下品な女に成り下がりたくない。それが私のルール。

 

でも、主と出会ってからそのルールを壊され始めている。野外での放尿や、胸を強調し、おおよそスカートとは呼べないような長さの衣装で外を歩く、そんな課題を主は私に与えてくる。

 

遊びなら、主従でなければ、いや、もし主従であっても主ほどの絶対的な支配力を持った人の支配下でなければ、私はこの課題をこなせなかっただろう。

 

そして、今日もまたタイトなワンピース、それも背中はほとんど開いている服を渡された。私が最も嫌悪感を抱くタイプの服装だ。もちろん、着るしか選択肢がないことは分かっている。それでも最後の悪あがきをしたくなる。着たくない、こんな服、私が着るものではないと。

 

「はい、早く着て氷取ってきて」

 

容赦ない主の言葉。私の悪あがきなんて全く効果はない。

 

部屋から出る直前、自分の姿がミラーに映った。普段の姿とはまるで違う自分がいた。服装もだが、そう、顔つきが違う。そこにいたのは、はしたない衣装を着せられて感じている奴隷だった。

 

廊下を歩きながら、数人にすれ違う。1人の男性が私のことをチラッと見た後、目線を逸らした。何と思われたのだろう。暗い髪色で化粧も濃くないのに、それに酷く不釣り合いなワンピースを着ている私を見て、彼はどう思ったのだろうか。調教だと分かられていたら、、、。帰り道は少し怖くなって早歩きになった。もし扉を閉められていたら私は部屋に入れない。このまま彷徨ってしまう。。。

 

部屋の扉が見えたとき、主の優しさを知った。扉は少し開いた状態だった。その優しさが私を暖かく包んでくれた。そして、その衣装のまま縄をかけていただいた。変わらず暖かく苦しい縄。今までの羞恥の苦しみが一気に苦痛の幸福へと変わっていく。主の縄は偉大だ。

 

縄の暖かさに包まれ始めた頃、私はまた現実を知ることになる。無理矢理ドアまで連れて行かれ、外に出されてしまったのだ。

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主がドアからカメラを向ける。廊下を挟んだわずかな距離がとても怖い。早く主の元へと戻りたい、、、。そんなことさえ叶わない自分の身分を痛感する時間だった。

 

部屋に戻っても、強制的に自分の姿を見せられる時間が続いた。そして、窓まで連れてこられて外を見せられた。私の本当の姿を知られてしまうことが怖かった。

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いつしか、私は、鞭で打たれるより、縄で苦しく縛られるよりもずっと心が壊れていた。精神的に極限まで来ていた。これが、主がいう「殻を壊す」ということなのか。。。

 

主がどんな目的でここまでの限界を見せてくるのか、正直よく分からない。それに、調教の終盤は未だに毎回思う、私は主についていけないかもしれないと。。。

 

その後さらに縄をかけられ鞭を打たれた。心も体もズタズタに壊れていた。

 

そして、出会ってから初めて主のそれが私の中に入ってきた。。。

 

実は、私は男性器恐怖症だ。そのことを主も知っている。だから、これまでの調教で少しずつ受け入れられるように導いてくださっていた。そして、前回の調教の後、「受け入れられるかもしれない」と主にお伝えした。そう、主はどんなに強制力を持っていても、私のトラウマに対しての配慮は絶対に欠かさない人だ。配慮しながら、私の意識を少しずつ変えてくださった。

それでもなお、入ってきた瞬間は怖かった。トラウマがフラッシュバックしそうになった。主はそのことを感じたのだろうか、その瞬間、セックスは責めに変わった。主は決して己の快楽に溺れることなく、私を責め続けた。私はこの時間さえも奴隷だと強く感じることができていた。私はこの感覚をずっと求めていた。「主」と自称する人が快楽に溺れて自分自身をコントロールできなくなる姿を見るのが何よりも嫌いだったから。

 

調教が終わった後、主が「受け止めてくれてありがとう」と言った。。。私が自分の被虐性や被支配欲の全てをぶつけられる相手がいなかったように、主も、主自身の加虐欲や支配欲の居場所を探していたのかもしれないと、ふと思った。

 

多分、私はまだ全てを受け止められていない。でも、いつか、主が遠慮することなく加虐し、存分に支配できるような奴隷に成長したいと改めて思った。

 

気づけば、調教の時に感じていた「主についていけないかもしれない」という感情は「主についていく」という強い意志に変わっていた。